【春になると出てくるのだ】
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今日は季節の話題でもお送りしてみようと思う。とは言え、この筆者のことだ。まともな話題ではない。
一時期のアホみたいな暖かさは影を潜めたものの、スイスもすっかり春模様である。あの暖かさの直前に、急に鳥がさえずりだしたのには驚かされたが、イースター(復活祭)休暇も昨日で終わり、時間もサマータイムに切り替わって、人間の方も遅まきながら春を感じているところだ。
春の暖かさが訪れると、いろんなものが出てくる。鳥たちもそうだ。啓蟄と言うくらいだから、虫さんだってそうだろう。でもここチューリッヒではさらに別のものも湧き出てくるのだ。
そう、それはおかしなガキどもやチンピラ達なのである。
彼らは冬の間は姿を潜ませているが、暖かくなるや否や外へと湧き出てくるのである。ある意味、非常に動物的というか、野性的なのだ。あのけったいな話し声を聞き、落ち着きのない姿を見ていると、「あぁ、今年も春が来たなぁ」としみじみと思ってしまう。
彼らの生物学的特徴は以下の通りである。
1.体型は痩せ型(太ったチンピラなど皆無である)
2.小さい頭部(それを隠すようにニット帽などを着用している確率高し)
3.常に閉まらない口元
4.そのせいで締りのない話し声(ヨダレ垂らしながら話しているのではないか?とさえ思う)
5.興奮気味のでかい嬌声・奇声
5.多動症気味の行動(ジッとしていられず、落ち着きなど皆無)
・・・ここまで書くと、ある種の疾患の方々なのでは?と思われるかもしれないが、そうではないところが怖ろしいところだ。こんなガキや若者が普通に結構いるのである。目線などはいたって普通なのだ。もっとも、正常と異常の区別の境界ははっきりとはしないものではあるが、外見的にはこれといっておかしなところはないのだ。
もちろん、スイス人にもこういう輩はいるのだが、筆者が観察した限りでは圧倒的に移民の割合が高い。これが民族的特徴なのか、はたまたチューリッヒ中心部ではもともと移民の割合が非常に高いからなのか、は明らかではない。
さて、今回の主題はガキどもの方である。いわば幼生型だ。
実は筆者のアパート、他のアパートや商業ビルとともに三角形の敷地を囲むように建っている。故に、この三角形の中庭は外部からはなかなか見えない。ここに変なチンピラやその幼生たるガキどもが巣食うのである。
あのガキども、小学校の低学年くらいである。この時期の子供は見ていても微笑ましいものだが、彼らはそうではない。だいたい、筆者から見ると、遊び方が既におかしい。
例えば彼らがサッカーボールを持ってきたとする。パスやシュートの真似事でもするのかと思いきや、そうではない。誰かがボールを人のいないあらぬ方向に蹴る。そして蹴っ飛ばしたあとに大声、奇声、嬌声をあげるのである。別に他の誰もそのボールをすぐに追ったりはしない。奇声が一段落してから、誰かがボールを取りに行くのだ。
キックボードに乗ってやってくるときもある。キックボードに乗って競争や曲技でも練習するのかと思いきや、そうではない。少し乗ると、いきなり手でキックボードを持ち上げて振り回しているのだ。そして大声、奇声、嬌声をあげる。
中庭には地下駐車場への入口がある。この入口付近でこの世のものとは思えぬ
「キィヤァアアアーーーー」
というとんでもなく高い嬌声をあげていることもある。どうやら地下での反響を楽しんでいるらしい。うるさくてたまらん。
ちなみに、彼らは日の高い時間にはあまり中庭に遊びに来ない。日が暮れそうになるとやってきて、完全に真っ暗になるまで遊んでいる。聴覚優位の遊びに明るさは関係ないのであろう。ひどいときには、夜の11時頃に遊びに来ることもある。親はいったい何をしているのだろうか?親が夜更かしだからだとは思うが、筆者思うに、きっとこの時間帯はガキどもを追い出して新たな子作りに励んでいるに違いないのだ。
この記事の最初に、暖かくなる直前に鳥たちがさえずりだして驚いた、と書いた。これは彼らにも言えることなのだ。あの暖かくなる直前、彼らは中庭に現れて遊びだしたのだ。彼らの気温予知能力は既に野生の鳥さんレベルなのである。
・・・というわけで、鳥たちのさえずりとともに彼らの嬌声を聞くと、「春が来るのか?」と思ってしまうのだ。
彼らの遊び方、どうも筆者には1,2歳頃の遊び方にしか見えないのだが、間違っているだろうか?筆者が小学校低学年の頃には、きちんとしたルールのある遊びを楽しんでいたような気がするのだが・・・。野球しかり、ビー玉しかり、ケンケンパーしかり、花いちもんめしかり、かくれんぼしかり、鬼ごっこしかり・・・である。郊外に行けばこのようなルールに基づいた遊びをしているスイス人の子供たちは多数見かけるのだが、あの中庭では皆無なのだ。つい先日、彼らがハンドボールで”お互いに”ボールを投げ合っていたのを見かけたとき、「おおっ!彼らも少しはまともな遊びができるようになったのか!」と感動してしまったほどなのである。以前であれば、あらぬ方向に投げて嬌声をあげていただけに違いないからだ。
こんな嬌声、発達期における一時的なものではないのか?と思われた方もいるかもしれないが、実はそうではない。現に筆者の真下に住む「バカ娘」(もちろん筆者命名)は既に高校生かそれ以上であるが、いまだに夜になると部屋の中で
「キィヤァアアーー!」「ヒャァアーー!!」
という馬鹿でかい高音の嬌声をあげているのだ。
・・・ちなみに中庭のガキどもも真下のバカ娘もスイス人ではない。子供の頃の遊び方には民族学的な違いがあるのだろうか?日本人には馴染みのない「大声や嬌声で聴覚を刺激して遊ぶ」というのは別の民族では当たり前のことなのだろうか?子供の遊び方の違いには興味深い文化人類学的テーマが隠されている気がしてならない。
とは言え、今の日本の子供たちがどうなのかさっぱり知らない浅はかな筆者にコメント・メールをお待ちしている。明日は話のついでに「真下のバカ娘」でも紹介してみたいと思う。