スイスマイナー旅行記 -ヴェグリタラー湖編-
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マイナーファンの諸君、お待たせした。今回も真にマイナーなスポットだ。今回紹介するのは「ヴェグリタラー湖(Waeglitalersee)」である。
この湖はチューリッヒの南方にある。チューリッヒからは鉄道とポストバスを乗り継いで1時間半弱ほどの距離だ。この湖の周囲のハイキングコース、筆者のハイキングの聖書とも言えるハイキングコースブックにやたらと紹介されている。ここはハイキング向きに違いない。しかしこの湖の周りは高い山で囲まれていて、どのコースもハードそうだ。その中から最も簡単そうなコースの一部だけを歩いてみることにしたのである。これなら大丈夫そうだ・・・と甘く考えた筆者が馬鹿だった。
出発点は湖の北端にある街「イナータル(Innerthal)」である。ここから見たヴェグリタラー湖はこんなのどかな感じである。
ちなみに筆者がハイキングを楽しむのは日曜だ。しかも日曜は昼頃までぐっすりと寝ているので、どうしても出発は午後になってしまう。このまま登り続ければ日が沈んでしまう。そろそろトイレとカフェが恋しくなってきた。こんな山道にはカフェはおろか、公衆トイレすらない。
・・・というわけで、筆者は勝手にここがゴール地点と定めて、もと来た道を引き返すことにした。筆者が勝手に定めたゴール地点から撮った写真がこれである。
さて、もと来た道を引き返して間もなくのことである。折角なので、別の道を降りてみようと思った。そこである分岐点で違う道を選択したのだが、この道、樹林帯で行きどまってしまった。その先に道がなかったのである。ハイキングコースを示す標識を探したが全く見当たらない。
「これはいけませんよ・・・」と考えた筆者は、またもと来た道へと引き返した。そして先の分岐点が間近に迫ったころ、先ほどは見落としていた別の分岐点を発見したのだ。
見落とす筈である。道は1つしかないのだから。分岐点のもう一方は完全に樹林帯の道なき部分を示している。
またもや筆者は「これはいけませんよ・・・」と考えてちゃんとした道の方を歩こうとした。しかし、である。地図によれば別の分岐点を行くほうが早く帰れることになっている。しかも先ほどの行き止まりとは違い、こちらの樹林帯のほうにはちゃんと木や石ころにハイキングコースを示す標識が点々と連なっている。カフェとトイレへの恋しさが限界に達していた筆者は、その誘惑に負けて樹林帯突入コースに足を踏み入れてしまったのだ。
このコース、道などはない。樹林帯に目を凝らして、ハイキングコースを示す黄色の菱形を必死で探してその通りに歩かねばならない。しかもそのマーク、黄色から紅白へと色が変化した。補足しておくと、この紅白のマーク、かなり厳しいコースを示すマークなのである。
筆者はそのマークだけを頼りに必死で樹林帯をかき分けた。途中でそのマークが途切れたときには「もう駄目だ」とさえ思った。このまま遭難した場合、筆者の不在に気付いてくれる人はいるであろうか?真面目にそう考えたほどだ。
1時間以上の迷走の上、やっとちゃんとした道のあるコースに合流できた。筆者は神に感謝した。
ほっとして束の間、筆者の目の前には神の化身とも思える荘厳な生物が現れた。
「お若いの。山を舐めたらいかんぞ。」
この牛、しばらくして振り返ったらいなくなっていた。神とは言わずとも、山の化身であったかもしれない。このような妄想溢れる筆者に生きていることの喜びを実感させてくれるコメント・メールをお待ちしている。