【スイスマイナー旅行記 ティンゲリー美術館・後編】
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それもそのはず、今回お届けするのは、昨日に紹介した「ティンゲリー美術館」の後編なのだ。今回の後編では主流の作品とは異なるヘンなもの(?)を紹介する予定なので、未読の方は是非昨日の前編からお読みいただきたい。
スイスを代表する芸術家であり、あのニキの旦那さんでもある「Jean Tinguely(ジャン・ティンゲリー)」。廃材を組み合わせて動いたり音が出たりする彼のユニークな作品を集めているのがこちらの美術館だが・・・
・・・彼の作品は館内にあるだけなのではない。外にも溢れてしまっているのである。
例えば庭を見てみると・・・
・・・彼の手になる噴水が飛沫を上げているのだ。
その奥に見えるカラフルな物体は・・・
・・・もちろん、奥様のニキの作品である。チューリッヒに住んでいるせいかもしれないが、彼女の作品を見ると何故だかホッとしてしまうのは筆者だけだろうか。
庭のもっと奥にはこんな作品も飾られている。
・・・上部の渦巻き円盤はいかにも回転しそうだが、真偽のほどは定かではない。
そして道路側のスペースには・・・
・・・こんなガスタンクみたいな作品も鎮座していた。なかなか興味をそそられる造形ではあるが、彼の作品にはついつい動くことを期待してしまうので、動いていないものを見ると妙にがっかりしてしまう。
実は館内にも動いていない奇妙な作品はあるのだが、その紹介の前にまずは「特別展示」の様子をお届けしてみたい。
筆者がここを訪れたのは今年のお盆の頃である。そのときの特別展示はこの音楽家にまつわるものだったのだ。
・・・右のパネルにいるおじさんが主役なのだが、この方のお名前は「Edgard Varèse(エドガー・ヴァレーズ)」という。無知な筆者は名前を聞いても全然分からなかったのだが、この方、「ミュージック・コンクレート(具体音楽)」の分野では非常に著名らしい。
ミュージック・コンクレートとは、人間や動物の声、鉄道や都市の音、自然界の音などを電気的に変質させ、それらの音響を素材として制作した電子音楽のことである。あの松本清張の代表作「砂の器」にも出てくるので、名前くらいは聞いたことがある方もおられるのではないだろうか? 彼の音楽は、テープ・コラージュと言われる手法で打楽器と電子音響をコラージュしたものらしいのだが、確かに館内には不思議な音楽が流れていた。
これだけでも充分に筆者の理解の域を超えているのだが、こんなものを見せられるとますます疑問符が脳内を駆け巡るのだ。
・・・ひょっとすると音楽には無関係なのかもしれないが(それさえも分からない)、どこが音楽家の展示なのだ?と思ってしまう。
そしてその疑問は次の針金細工を見たときに頂点に達するのだ。
・・・実はこの針金細工、ゆっくりと回転したりしている。動くたびに壁に映った影の形が変わっていくのが面白くはあるのだが、うーむ、いったい何の展示なのかサッパリ理解できなかったのである。とにかく、かなり前衛的で多才な方だったようだ。筆者の説明では皆様もサッパリだと思うので、もっとよく知りたい方はこちらのページ(特別展の説明)をご参照いただきたい。
理解できないと言えば、ジャン・ティンゲリーさんの作品コーナーにもそんなものがあったのだ。例えばこちら。
・・・なぜか天井にはひっくり返った複葉機が吊るされているのだが、動くわけでもなし、意味がよく分からなかったのである。
と思えば、一般的な彼の作風とはかなりかけ離れたこんな作品も。
・・・あのスターウォーズのチューバッカや火星人みたいな顔の彫刻なのだが、こんな彫像も作っていたのか。これで微妙に顔が動けば相当に面白いのではあるが。
そして筆者が最も理解できなかった、そして最も恐ろしかった(?)ジャン・ティンゲリーの作品がこちらなのだ。
・・・昨日紹介した怪鳥や鎌つき自動車、そしてシンバルと太鼓だらけのトラクターと同じ展示室にあったものだが、目を凝らして見ても、やっぱり普通の冷蔵庫なのだ。ひょっとすると、秘密はその中身にあるのかもしれないが、筆者には恐ろしくて開けることができなかった。
これだけ恐れたのには訳がある。実は筆者がこの展示室に入ってきたとき、室内にはけたたましい警報が鳴り響いていた。そして係の方が慌ててこの冷蔵庫の扉を閉めるところを見てしまったからなのだ。そう、開けた瞬間に物凄い警報が鳴りそうで怖かったのである。他の誰かがこっそり開けてくれないかと期待して待っていたのだが、そんな酔狂な人は遂に現れなかったのだ。
・・・あの冷蔵庫の扉を筆者と一緒に開けに行ってみたいという勇気溢れる貴方からのコメント・メール・お誘いを心からお待ちしている。
*「人気ブログランキング」におけるこのブログの順位は、警報を鳴らしてもいいほど急降下中です・・・。というわけで、「覗くべからず」と言われると覗きたくなってしまう好奇心旺盛な貴方も、実はミュージック・コンクレートにも精通している知的な貴方も、以下のバナーをクリックしていただかないと、筆者も貴方の身体の扉を開けます。そして歓喜の警報を鳴らさせます。その音の素材で具体音楽を作曲だ!?