週末コラム「殿ご乱心」: 【国境を越えた音楽】
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・・・などとよく言われるが、果たして本当にそうなのか、と疑問に思うときもある。
あれは筆者がスイスに来て間もない頃だった。
筆者の職場の部屋では、ラジオやCDやらでいつも音楽がかかっている。同部屋の同僚達が楽しんでいるのだが、ある日、隣の席のブラジル人女性同僚がこう訊いてきたのだ。
・・・はっきり言って、筆者にはこれと言って好きな分野はない。クラシックであれジャズであれロックであれ、邦楽であれ洋楽であれ、自分が心地いいと感じた曲が好きなだけである。そう言えばよかったものの、面倒臭がりの筆者はこう答えてしまったのだ。
・・・これを聞いた同僚は、嬉々としてこうお願いしてきたのである。
・・・残念ながら、筆者はこちらにジャパニーズ・ポップスなどのCDは1枚も持って来ていなかった。正直にそう言えばいいものの、いい加減な筆者はこう答えてしまったのだ。
・・・なんとも中途半端な約束をしてしまった筆者は、日本の知人達に応援を頼んだ。知人達の考える「日本を代表するポップス」の音楽データを1人1曲ずつ送ってもらったのだ。筆者がリクエストした3曲を含め、計10曲のジャパニーズ・ポップスが集まった。これをCDに焼いて、筆者は颯爽と出社したのである。
すっかり喜んでくれたブラジル人同僚は、早速このCDを部屋の中でかけ始めた。最初の3曲は筆者自身がリクエストした曲だったので、この時点では筆者も自信満々であった。遂に渾身の選曲であるジャパニーズ・ポップスがスイスに流れたのだ。
1曲目:「情熱大陸」 葉加瀬太郎 with 小松亮太
・・・厳密にはポップスではないのだろうが、さすがは葉加瀬太郎、ブラジル人女性もノリノリだった。「これは好きだわ!」と言ってくれたのである。つかみはOKだったのだが・・・
2曲目:「地上の星」 中島みゆき
・・・詩の内容もメロディも大好きなこちらの曲、筆者はしみじみと感傷に浸っていたのだが、ここで部屋の同僚達は誰も口を利かなくなってしまった。そして・・・
3曲目:「月のしずく」 RUI(柴咲コウ)
・・・更に筆者が物悲しさにどっぷりと浸っている最中、ついにドイツ人女性同僚が立ち上がった。彼女はつかつかとCDプレイヤーに近付くと、ボリュームを思いっきり下げてしまったのである。殆ど聴こえないくらいに。
とりあえず演奏は続けられていたものの、以降の曲は筆者をはじめ誰にも聴き取ることなどできなかったのだった。あの日以来、ジャパニーズ・ポップスが職場で話題になることはない。
ちなみにジャパニーズ・ポップスの粋を集めたこのCDの内容は以下の通りである。
1.「情熱大陸」 葉加瀬太郎 with 小松亮太 (筆者リクエスト)
2.「地上の星」 中島みゆき (筆者リクエスト)
3.「月のしずく」 RUI(柴咲コウ) (筆者リクエスト)
4.「My Sweet Darlin'」 矢井田瞳
5.「サクラドロップス」 宇多田ヒカル
6.「Any」 Mr. Children
7.「さくら(独唱)」 森山直太朗
8.「アイ~ンダンスの唄」 バカ殿様とミニモニ姫。
9.「You keep me hanging on」 Kim Wilde
10.「ルパン三世-銭形マーチ」 東京スカパラダイスオーケストラ
・・・中盤は良かったのかもしれないが、この8曲目はなんなのだ? 最後まで聴いてもらっても結果は同じだったのかもしれない。
最後に一言言わせてください。
私のリクエストが悪かったせいで、試みは儚く失敗に終わりました。
でも「9曲目」のデータを送ってくれたそこの貴方、
これ、”ジャパニーズ”・ポップスじゃありませんよ。
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・・・思えば同部屋の同僚達はレッドホットチリペッパーズなどのロックが大好きなのだった。うーむ、B'zやGLAY、ラルクにポルノあたりで勝負すればよかったかもしれない。意表をついて矢沢の栄ちゃんや山下達郎なんかも面白いかも。