【バレンタインデーの思い出 暗黒期編】
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【第1次暗黒期】
小学3年生で初のチョコを手に入れた筆者は思い上がっていた。バレンタインデーなんて毎年チョコがもらえるものと信じ込んでいた。しかしこれが如何に思い上がった考えであるかはその後の10年で思い知らされることになる。なにせこれから20歳頃まで全くチョコとは縁がなかったからだ。こうして少年はモテナイ自分を自覚し、大人になっていったのである。
ただし、つまらぬ言い訳だが、筆者は全くもてなかったわけでもない。中にはマニアックな女子もいたようである。こう言ってはなんだが、中学1年の筆者はかなり可愛かった同級生女子に手紙で告白されて、つきあったことだってあるのだ。あの頃は男子の妬みの視線が痛かった。しかしたった1ヶ月で他の男に乗り換えられて振られてしまっただけの話である。バレンタインはもとより、夏までも持たなかったのだ。中学の時はまだマニアックな人気もあった。が、これが高校に入ると全く目立たない存在に落ちぶれてしまったのだ。
そしてバレンタインデーの悲劇?はその暗黒の高校時代に襲ってきたのである。
筆者が高2のときだ。当時の筆者は既にバレンタインデーのチョコレートなどすっかり諦めてしまっていた。悟っていた。
バレンタインデー当日、筆者は通学のため地下鉄に乗っていたのだが・・・。
ふと横を見ると、同級生女子の集団がいた。誰にチョコレートをあげるかという話で盛り上がっている。筆者の存在には気付いてもいないようだった。
「えーっ、××ちゃん誰かにチョコレートあげんの~っ!?」
「うん」
「えーっ、だれだれ~っ??」
「○○君」
ここで筆者は凍りついた。そう、○○君とは筆者の苗字だったからである。しかし、だ。実は筆者の苗字はありふれているので、○○君は筆者以外にもいるのである。だが彼女らの会話は無情にもこう続く。
「えーっ、そうなん!あの子のどこが・・・」
「ちょ、ちょっと、そこにいてるでっ!」
…これで筆者であることがハッキリとしてしまった。車内を見渡したが、筆者以外に○○君はいなかったからである。そのときハッキリと思い出した。いつぞの休み時間だったか、筆者はこの彼女に妙に熱い視線でじっと見られていたことがあったのだ。そのときは「こいつ風邪でも引いたんかいな?」と思っていたのだが、これで全てが明らかになったのだ。
本来なら喜ぶべきところであるが、筆者は困った。だってそうであろう。その女子とは喋ったことすら記憶になく、しかも筆者のタイプでは全然なかったからである。もらってしまうと大変なことになる。下手に断ってみろ。女性陣から総攻撃を受けそうではないか。
これはいかん。筆者は焦った。昼休みはどこかに潜むか多数の友人たちに紛れて過ごした。問題は放課後である。この放課後が最も危険だ。
筆者は学校が終わるや否や、ダッシュで地下鉄の駅に走って帰ってしまった。もらえないとは知りつつも、仄かな希望を抱いてノソノソしていたいつもの放課後とは大違いだ。こんなバレンタインデーの放課後は生まれて初めてだった。
このような暗黒時代を経て、ようやく筆者は薔薇色の黄金期を迎えるのだ!
何故かバレンタインデー当日まで続くこの企画、最終回「黄金期編」は明日のバレンタインデーを待てっ!