【嵐を呼ぶ小学生 -こっくりさん編-】
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今週は筆者が小学生時代に引き起こした大騒動について語りたい。そう、筆者は小学生時代は「嵐を呼ぶ男」だったのだ… とは明らかに言い過ぎであるが、まぁ聞いてくれ。
第1回目の今夜は「こっくりさん編」である。
皆さん、「こっくりさん」は御存知であろう?そう、50音や数字を書いた紙の上に10円玉を置き、参加者のみなの指を10円玉に添えると、誰も動かしていると意識していないのに10円玉がふらふらと動き出すというあの遊びだ。この10円玉が文字や数字をなぞって質問の答えを告げるのである。
筆者は小学3年生の時、この「こっくりさん」を田舎の従兄妹のお姉さんから教わった。どんなものであれ興味をもったものはやらずにはいられない筆者は、大阪に帰ってきて勿論この遊びを友人と試したのだ。
最初のうちは面白かった。しかしこのような怪しい遊びが何事もなく終わるはずがないのだ。
何回目かの「こっくりさん」の時である。呼び出した「こっくりさん」が急に怒り始めた。なんとかご機嫌を取ろうと、筆者はこう質問した。
「どうしたら怒りを鎮めてもらえますか?」
この質問に対し、「こっくりさん」こと10円玉はこう文字を辿っていったのである。
「イ エ モ ヤ セ」
…「家燃やせ」とのお告げらしかった。これはいかん!と筆者は思い、この「こっくりさん」を途中で強引に終了した。当時から妙に醒めていた筆者は、「こっくりさん」で遊びながらもそんな超自然的な存在は信じていなかったので、一緒に遊んでいた友人たちにも「こんなん所詮遊びやから気にするな」と言ってオロオロする友人たちを慰めたのである。
しかし、そんな慰めではどうにもならぬほど「こっくりさん」を恐れた友人が1人いた。豆腐屋の息子のM君である。
M君は家に帰るやいなや、ご両親に泣きながらこう訴えてしまったのだ。
「お願いやから家燃やしてくれ!」
御両親がビックリいたのは言うまでもない。筆者は知らなかったのだが、この豆腐屋さん、1週間ほど前にボヤで店舗部分が半焼したばかりだったのである。
そうとは知らぬ筆者は、その「こっくりさん」のことなど忘れて算盤塾に通っていたのだが、帰ってくるなり自宅周囲が妙に騒がしいことに気付いた。どれも見知らぬ年長の少年少女たちだったが、とにかくその豆腐屋に来い、という。そこでは「こっくりさん」遊びのメンバーが皆呼び出されていた。そう、あの年長の方たちは彼の姉とその友人たちだったのだ。
当たり前であるが、その場で彼のお父さんにコッテリと絞られた。あんなくだらない遊びは止めろ!ときつく怒られたのである。
それ以来、筆者の中で「こっくりさん」遊びは封印された。
筆者は当時、なんであいつはあんなことを本気にするのだ、と半ば呆れていたが、今となってはそれも仕方なかろう、と思う。やってみたことがある方には分かるであろうが、あれは本当に誰も意識的に動かしていないのに意味あるように動くのだ。普通の人ならそれだけで超自然的な存在を信じてしまうであろう。
あれはどうやら意識下の筋肉の運動、すなわち不随意運動が引き起こすものらしい。誰も意識してはいないとはいえ、意識下で誰かが動かしているのだ。
ということは、だ。きっとあのメンバーの中で豆腐屋さんの火事を知っていた人間がいたのである。もちろん息子のM君は知っていたに違いない。それが無意識のうちに表出したのだ。
…今回はお笑いでもない苦い思い出を書いてしまった。このような苦い思い出は誰にもあるに違いない。これを語れるようになってこそ、人は大人になるのだ。ところが筆者の呼んだ嵐はこれだけにはとどまらないのだ。
次回「銀弾(ぎんだま)鉄砲編」については明日を待て!